「一人称単数」(村上春樹)
「人間の在り方」について疑念を抱かせるような 「一人称単数」(村上春樹)文春文庫 ここで語ろうとしているのは、一人の女性のことだ。とはいえ、彼女についての知識を、僕はまったくと言っていいくらい持ち合わせていない。名前だっ...
「人間の在り方」について疑念を抱かせるような 「一人称単数」(村上春樹)文春文庫 ここで語ろうとしているのは、一人の女性のことだ。とはいえ、彼女についての知識を、僕はまったくと言っていいくらい持ち合わせていない。名前だっ...
「純文学」と「大衆文学」を隔てる壁 「街とその不確かな壁」(村上春樹) 新潮社 ホルヘ・ルイス・ボルヘスが言ったように、一人の作家が一生のうちに真摯に語ることができる物語は、基本的に数が限られている。我々は、その限られた...
読み手もまた「街」と「現実世界」の間を浮遊する 「街とその不確かな壁」(村上春樹) 新潮社 きみがぼくにその街を教えてくれた。その夏の夕方、ぼくらは甘い草の匂いを嗅ぎながら、川を上流へと遡っていった。銀色の魚たちを眺めた...
世紀末から21世紀への転換点、進化する日本文学 「日本文学100年の名作第9巻 アイロンのある風景」新潮文庫 「アイロンのある風景 村上春樹」二月の深夜、三宅から焚き火に誘われた順子は、恋人・啓介とともに海岸へ向かう...
「死」と隣り合わせにいる人間への光明 「アイロンのある風景」(村上春樹)(「神の子どもたちはみな踊る」) 新潮文庫 「アイロンのある風景」(村上春樹)(「日本文学100年の名作第9巻」) 新潮文庫 二月の深夜、三宅から焚...
それらは一体何のメタファーとして機能しているのか 「色彩を持たない多崎つくると、 彼の巡礼の年」(村上春樹) 文春文庫 多崎つくるは16年前の大学生時代、親密な付き合いをしていた四人の友人たちから一方的に絶交を言い渡さ...
どの文章も人を引きつける磁力線を放っています 「雑文集」(村上春樹)新潮文庫 「雑文集」ならぬ珠玉の「名文集」です。どの文章も人を引きつける磁力線を放っています。いろいろな分野についてのエッセイが収録されています。食い入...
彼の人生の歯車は、再び停止した 「ダイアモンドのギター」 (カポーティ/村上春樹訳) (「ティファニーで朝食を」)新潮文庫 模範囚ミスタ・シェーファーは、殺されて当然の悪人を殺した罪で99年の刑に服していた。そこへダイア...
「プロローグ」は「エピローグ」なのか、それとも 「騎士団長殺し(全4冊)」 (村上春樹)新潮文庫 「顔のない男」は、 約束に従って「私」に肖像画を 描くことを要求する。 困惑する「私」に、 男はペンギンのお守りを提示する...
作品の構成様式は、「容れ物」に過ぎない 「騎士団長殺し(全4冊)」 (村上春樹)新潮文庫 姿を消した少女まりえを探す 「私」に対し、 騎士団長は言った。 「簡単なことだ。 あたしを殺せばよろしい」。 「騎士団長殺し」が完...